安静時超音波画像のstrain rate解析法による検査

正常のstrain rate(心筋の収縮・拡張の速度の変化)曲線。収縮期ではV字型を示す。

正常のstrain rate(心筋の収縮・拡張の速度の変化)曲線
安静時超音波画像のstrain rate解析法による検査

(a)左冠動脈回旋枝に75%狭窄。
(b)右冠動脈は正常。
(c)回旋枝領域である左室後壁のstrain rate曲線。V字型が浅くなっています。
(d)治療後のstrain rate曲線。正常なV字型に戻っています。

この現象を利用して正常冠動脈108例(LAD38例、RCA36例、LCX34例)と冠動脈75%≦狭窄71例(LAD26例、RCA24例、LCX21例)を対象とし75%≦狭窄の有無を診断する数式を当院独自に考案しました。Strain rate曲線で100msec値,200msec値,100msec〜200msec間最小値,100msec〜200msec間平均値の4つのパラメーターは冠動脈3領域で狭窄枝との間に良好な有意差と正診率が認められ:

75%≦狭窄の判別関数:Z=4.913+1.021×(100msec値)+1.225×(200msec値)−0.460×(最小値)+4.827×(平均値)
で Z>0の時75%≦狭窄と診断されます。

同様な方法で90%≦狭窄の数式も作成しこの二つの数式を使い分けることで冠動脈狭窄度を安静時(なんら負荷をかけることなく)の心臓超音波画像から診断出来るようになり患者様の検査時の負担は大幅に軽減しました。
この方法は日本では既に特許を取得しており、現在米国の特許権を出願、申請中です。

安静時超音波画像のstrain rate解析法による検査
安静時超音波画像のstrain rate解析法による検査

1:100msec SR, 2:200msecSR, 3:minimumSR between
100 and 200msec, 4:meanSR during 100 and 200msec.

安静時左室壁断層像の2D Strain Rate 値による冠動脈狭窄度の診断

H19年9月 第55回日本心臓病学会


【目的】

安静時左室壁運動のlongitudinal 2D strain rate curveから得られる4点の strain rate 値(1/s)を使用する判別関数を作成し、判別関数を使用することにより安静時心エコー図の左室壁断層像から冠動脈狭窄度を診断できないかを検討した。

【症例】

正常冠動脈108例(RCA36例LAD38例LCX34例)と75%狭窄50例(RCA16例LAD18例LCX15例)、90%狭窄33例(RCA10例LAD11例LCX12例)について検討した。

【方法】

安静時のApex viewのうちApex2ch viewの左室前壁中央部をLAD領域、同viewの下壁中央部をRCA領域、ApexLAX viewの左室後壁中央部をLCX領域とした。これ等3領域のlongitudinal strain rate curveから100msecSR値、200msecSR値、100〜200msec間の最小SR値(最小SR値)、100〜200msec間の平均SR値(平均SR値)の4因子のstrain rate値を正常群と狭窄群とで比較検討した。

【結果】

1)75%狭窄群:100msecSRは三領域全体で正常群−1.146±0.485 狭窄群−0.387±0.650 p=1.921e−10,200msecSRは正常群−1.050±0.429 狭窄群−0.405±0.425 p=1.732e−15。最小SR値は正常群−1.451±0.375 狭窄群−0.720±0.507 p=1.090e−13。平均SR値は正常群−1.146±0.307 狭窄群−0.395±0.3867p=1.939e−16。これら4因子は三領域全てで有意差を認めた。診断率は100msecSR値ではcut-off 値−0.706で感度80.0%、特異度86.1%、正診率84.2%、200msecSR値でcut-off値−0.742で感度84.0%、特異度83.3%、正診率83.5%、最小SR値ではcut-off値−1.101で感度86.0%、特異度82.4%、正診率88.5%、平均SR値ではcut-off値−0.805で感度86.0%、特異度88.0%、正診率87.3%であった。

2)90%狭窄群:正常群の4因子のSR値は省略し90%≦狭窄群のSR値と検定結果のみを示す。100msecは三領域全体で−0.254±0.372 p=1.110e−16、200msecSRは−0.276±0.304 p=1.290e−16。最小SR値は−0.543±0.357 p=4.441e−16、平均SR値は−0.305±0.249 p=0.000。この群でも三領域の各々で4因子は有意差を示した。診断率は 100secSR値はcut-off値−0.635で感度87.9%、特異度88.9%、正診率88.7%、200msec値はcut-off値− 0.637で感度99.9%、特異度88.0%、正診率89.4%、最小SR値でcutt-off値−0.919で感度90.9%、特異度97.2%、正 診率95.7%、平均SR値でcut-off値−0.698で感度97.0%、特異度94.9%、正診率95.0%であった。

【総括】

100msecSR値 200msec値 最小SR値平均SR値はいずれも有用な因子であり、これら4因子の75%狭窄と90%≦狭窄の判別係数を用いて冠動脈狭窄度を求める判別関数を求めた。75%狭窄の判別関数は Z =5.38724−0.0411532×(100msecSR値)+0.594084×(200msecSR値)+0.408839×(最小SR値)+5.86697×(平均SR値)。Z>0の時75%狭窄となりその判別確率は87.01%であった。90%狭窄の判別関数はZ=8.20393+2.18254×(100msecSR値)+3.1092×(200msec値)+2.36328×(最小SR値)+3.11278(平均SR値)。Z>0の時90%狭窄となりその判別確率は93.44%であった。

【結論】

安静時の左室壁断層像をlongitudinal 2D strain rate法で解析し100msecSR値 200msecSR値 100〜200msec間最小SR値100〜200msec間平均SR値の4因子用いて関数計算することより冠動脈狭窄度を診断できる可能性があると考える。

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