ウエストサイズ

生活習慣病の患者様には運動療法の必要性・有効性を折に触れ説明・指導させて頂いていますが、その目標は運動による体重減少とコレステロール・中性脂肪・血糖の改善であり、その効果として高血圧の改善、動脈硬化進行の抑制が期待されると一般的に考えられています。しかし、最近では運動により直接的に血管機能(血管の拡張機能≒血管の柔軟性)が改善すると報告されるようになりました。運動療法が多くの効果を有し、心臓・血管の合併症の予防につながると考えられます。
これに関する学会発表の抄録を載せて頂きます。少々難解なところもありますがお読みいただき、皆様方の日頃の運動療法継続への励みとして頂ければ幸いです。

第22回 日本高血圧学会総会
26 運動習慣は本態性高血圧疾患の血圧を低下させ、血管内皮機能を改善する

京都工場保険会診療所    森口次郎、伊東宏、城戸秀典
京都府立医科大学第二内科 原田早苗、八田告、中田徹男

【結論】

2〜3回/週程度の習慣的運動は血圧を有意に低下させると共に、脂質代謝の改善、尿酸値の低下をもたらし、さらに血管内皮機能を改善することより降圧効果のみならず血管保護の面においても有効である可能性が示唆された。

【目的】

健康診断で高血圧所見を有した男性を対象に12週間の運動療法を実施し、その降圧効果、および血管内皮機能改善効果、またこれらに影響する可能性のある諸因子について検討した。

【方法】

職場の健康診断にて高血圧所見(90≦拡張期血圧<100mmHgかつ、または140≦収縮期血圧<180mmHg)を認め、高血圧未治療で運動習慣のない男性14名(平均年齢39±2.7歳、高脂血症、糖尿病で治療中の者は除外)を対象とした。運動療法(自転車エルゴメーター、拡大酸素摂取量の約50%で、60分/回、2〜3回/週)を12週間行わせた。運動療法の前後で身長、体重、体脂肪率の測定、血液検査(総コレステロール値、中性脂肪、HDLコレステロール値、血糖値、ヘモグロビンA1c、尿酸値、血漿レニン活性、アドレナリン、ノルアドレナリン)、自転車エルゴメーターによる最大酸素摂取量測定、5分間安静後の血圧測定を行うと共に、7.5MHzの高解像度超音波探触子を用いて、右上腕動脈径と血流波形を、臥位安静時、5分間虚血後の反応性充血時およびニトログリセリン0.3mg舌下後に計測を行った。血管内皮機能の指標として反応性充血時の血流依存性拡張度(FMD)を、またニトログリセリ ンによる内皮非依存性拡張度(NTG-D)を算出した。

【成績】

12週間の運動前後で体重、体脂肪率、糖代謝、血漿レニン活性の変化は認めなかったが、血圧は収縮期、拡張期共に有意に低下した(140.1±8.9/90. 7±8.9mmHg vs 129.4±8.7/84.3±6.5mmHg,p<0.001)。HDLコレステロールは有意に増加し(48.6±14.1mg/dl vs 54.1±12.4mg/dl,p<0.001)、尿酸値は有意に減少した(6.0±1.7mg/dl vs 5.6±1.6mg/dl,p<0.005)。最大酸素摂取量は有意ではなかったが、増加傾向を認めた(33.4±6.5ml/kg/min vs 35.2±9.5ml/kg/min)。 FMD(血流依存性拡張度)は12週間の運動前後で有意に増加(5.2±2.4% vs 8.2±2.8%,p<0.001)したが、NTG-D(内皮非 依存性拡張度)には有意な変化を認めなかった(15.7±5.2% vs 15.6±5.3%,NS)。

【考察】

本研究より12週間の運動の後、血圧の低下と血管内皮機能の改善を認めた。これまでの報告では、運動による血管内皮機能の改善は、運動によるシアストレスの増加や、運動による脂質代謝改善効果によるという報告があるが、本研究の結果はそれを支持するものと考えられる。本研究の結果のみからは、運動による血圧の改善、血管内皮機能の改善、尿酸値の改善、血清脂質の改善のメカニズムについては、明確なことは言えない。しかし、運動療法は単に血圧を下げるだけの効果に留まらず、血清脂質改善、尿酸値改善、血管内皮機能改善などを介して、多方向から高血圧による心血管合併症の発症を予防する効果があると期待される。

改善の見られた諸指標間の相互メカニズムについて、今後更なる研究が必要であると考えられる。

生活習慣病の患者様には運動療法の必要性・有効性を折に触れ説明・指導させて頂いていますが、その目標は運動による体重減少とコレステロール・中性脂肪・血糖の改善であり、その効果として高血圧の改善、動脈硬化進行の抑制が期待されると一般的に考えられています。

しかし、最近では運動により直接的に血管機能(血管の拡張機能≒血管の柔軟性)が改善すると報告されるようになりました。運動療法が多くの効果を有し、心臓・血管の合併症の予防につながると考えられます。
これに関する学会発表の抄録を載せて頂きます。少々難解なところもありますがお読みいただき、皆様方の日頃の運動療法継続への励みとして頂ければ幸いです。

閉じる